得意淡然 失意泰然

生きて生きて生きて生きて生きる

アルゴリズムが支配する世界

アンナカレーニナがスマートフォンを取り出して、カレーニンの妻であり続けるべきか、それとも颯爽としたヴロンスキー伯爵と駆け落ちするべきかをフェイスブックアルゴリズムに尋ねるところを想像できるか?シェイクスピアの戯曲できわめて重要な決定がすべてGoogleアルゴリズムによって下されることを想像できるか?ハムレットマクベスははるかに安楽な人生を送れるだろうがそれはいったいどんな種類の人生になるのか?そのような人生の意味を理解するためのモデルが私たちにはあるのか?

今日すでに私たちは誰一人よく理解していない巨大なデータ処理システム内部のごく小さなチップと化しつつある。

数十年のうちにはバイオメトリクスデータの途切れることのない流れに情報を提供してもらっているビッグデータアルゴリズムが私たちの健康状態を24時間体制で毎日モニターできるようになる。ビッグデータアルゴリズムは、私たちが異常を感じるよりもずっと以前にインフルエンザや癌やアルツハイマー病を最初期の段階で検知することができる。そして私たち一人ひとりに特有の体格やDNAや性格に合った適切な治療や措置、食事、日々の養生法を推薦できる。人々は史上最高の医療を享受できるが、まさにそのせいで、おそらく四六時中、病気になるだろう。過去には人は痛みを感じない限り、あるいは足を引きずるなどあきらかに障害が出ない限り完全に健康だと感じていた。ただ2050年までにはバイオメトリクスセンサーとビッグデータアルゴリズムのおかげで、病気は痛みや障害につながるよりもはるか以前に診断され治療されるようになるかもしれない。その結果、人は常に何かしらの健康問題を抱え、アルゴリズムからあれやこれやの勧めに従う羽目になるだろう。ただ、こうした病気のいっさいに対処できる暇とエネルギーのある人などいるだろうか?

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