得意淡然 失意泰然

生きて生きて生きて生きて生きる

後世に遺したいもの

人間が後世に遺すことのできる、誰にも遺すことができるもので、利益ばかりがあって害のないものがある。それは勇ましい高尚な生涯である。これが本当の最大遺物である。高尚なる勇ましい生涯とは、この世はけっして悪魔が支配する世の中ではなく、神が支配する世の中であるということを信じること、失望の世の中にあらずして、希望の世の中であることを信じること、この世の中は悲嘆の世の中でなくして、歓喜の世の中であるという考えを我々の生涯に実行して、その生涯を世の中への贈り物としてこの世を去るということである。その遺物は、お金や事業や文学などと違って誰もが遺すことができる遺物ではないかと思う。後世のために私は弱いものを助けてやった、後世のために私はこれだけの艱難に打ち勝ってみた、後世のために私はこれだけの品性を修練してみせた、後世のために私はこれだけの義侠心を実行してみた、後世のために私はこれだけの情実に勝ってみた、とこの心掛けを持って我々が毎年毎日進んだならば、我々の生涯はけっして70年や80年の生涯にはあらずして、実に水の辺りに植えたる樹なようなもので、だんだんと芽をふき枝を生じてゆくものであると思います。

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